米国防長官が次期主力戦闘を押し売り



 25日行われる日米の防衛大臣会談で、アメリカのパネッタ国防長官は、自衛隊の次の主力戦闘機の選定について、アメリカが中心となって開発した機種を念頭に選定にあたるよう伝える方針であることが伝えられた。(http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4859458.html
 次期主力戦闘機の選定については、このブログでも前に一度述べた。(http://d.hatena.ne.jp/NOFNOF/20111011/1318352751)筆者としては、3機種ある候補機のうち、ブラックボックス無しの国内ライセンス生産が可能なユーロファイターが最も良いとの結論である。しかし、日本の防衛体制が米軍に依存した仕組みで出来上がっていること、そして日米関係が、とりわけ重要な関係である現実を踏まえれば、その選択が難しいものであることは分かる。
 もし、日本がアメリカの意向に配慮するならば、次期主力戦闘機は米英が共同開発中のF35ライトニング2あるいは、米海軍のFA18E/Fの、いずれかということになる。
 だがこのうち、F35に関しては現時点で未完成であり、日本が求める平成29年3月末までの完成機納入さえ不安視されている。F35はステルス機であり、予想される高性能から、当初、次期主力戦闘機としての期待が高かった。けれども、未完成ということのデメリットは、兵器の実用性という視点で考えると、実は致命的なことなのだ。日本は、太平洋戦争において、それに苦しんだ経験がある。
 太平洋戦争も中期以降になると、日本の誇る零式戦闘機、いわゆる「ゼロ戦」の性能にも陰りが見え始める。米軍がゼロ戦より優位な性能を持つ新型戦闘機、F6Fヘルキャットを戦場に投入し始めたからだ。これに対して、日本はゼロ戦の設計者である堀越二郎に、後継機の開発を委ねた。開発されたのは、設計値でヘルキャットを上回ると予想された戦闘機「烈風」である。
 烈風は、ゼロの運動性とヘルキャットのパワーを併せ持つ戦闘機として期待され、次期主力戦闘機として直ちに開発が進められた。ところが思わぬ落とし穴があった。予定されていた二千馬力級エンジンがなかなか完成しなかったのだ。その上、計画したパワーも発揮できなかった。その結果、ゼロ戦は、後継機を持たぬまま、終戦まで苦しい戦いをせねばならなくなったのである。
 F35がいくら高性能機と宣伝されても、完成しない内は、それは紙の上の話だけだ。宣伝を真に受けて早々と導入を決めたは良いが、引き渡しを受けてみると駄作機で使い物にならないという例は、航空機の世界では良くあるのだ。従って、日本にとって高価な買い物である次期主力戦闘機を未完成機から選ぶことは大変に危険である。
 そうなると、米国製に拘るならFA18E/Fしか無いということになる。だが正直なところ、FA18E/Fには大きな魅力が無い。機体設計が古い上に、日本での100%ライセンス生産ボーイングが認めていないのだ。恐らくエンジンやアビオニクスについてはブラックボックスとして非開示にされるだろう。
 一方、欧州機のユーロファイターに関しては、開発したBAEシステムズが機材、エンジン、武器、センサーなどあらゆる技術に触れられることを条件として、日本に売り込みをかけているのだ。このようなチャンスは滅多にあるものではない。日本では、将来的に国産戦闘機開発の構想を持っている。ステルスでは無いにしても、最新鋭のユーロファイターの技術を吸収することができれば、日本の国産戦闘機開発に大きく生かせるだろう。
 穿った見方をすれば、今回の米国防長官の日本訪問の目的は、日本の将来戦闘機開発能力を潰し、日本の航空産業の成熟を阻止する狙いもあるように思う。何故そう思うかといえば、アメリカはレーガン政権時代に、一度、日本に対してそれを行っているからだ。
 1980年代に計画された日本の純国産戦闘機、次期支援戦闘機FSX。アメリカは、この計画に対し様々な政治的圧力をかけ、日本の独自開発計画を潰すことに成功した。FSXは、結局アメリカとの共同開発とされ、機体もF16の改良型とされた。おまけに重要部分はブラックボックスとされ日本に秘密にされる一方、当時、日本しか持っていなかった炭素繊維による翼の製造技術などは、全てアメリカに持っていかれてしまった。あげくに完成したF2戦闘機は高価で中途半端なものになり、日本は予定していた調達を途中でストップしたのだ。
 今回のパネッタ国防長官のゴリ押しでFA18E/F、あるいはF35が選定されたとしても、驚きはしない。しかしながら、その決定がなされたときは、一国民として、大変残念な気持ちがするだろうと思う。

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