だから旧日本軍の毒ガスじゃないって!!!



 昨日に引き続き、神栖市ヒ素事件の件を取り上げる。以下は東京新聞の記事。
有機ヒ素に汚染された井戸水を飲んだ茨城県神栖市の住民三十九人が健康被害を受けたとして国と県に計約一億円の損害賠償と原因究明を求めた裁定で、国の公害等調整委員会(公調委)は十一日、必要な調査や周知をしなかったとして、県に対して、因果関係がみられる三十七人に一人当たり五万〜三百万円、計約二千八百万円の賠償を命じた。公調委が健康被害自治体の責任を認めたのは初めて。国の責任は認めなかった。 
 裁定によると、二○○三年、井戸水から環境基準値の四百五十倍のヒ素が検出され、汚染が発覚した。県は既に一九九九年、同じ地域の井戸水から高濃度のヒ素を検出したにもかかわらず、水質汚濁防止法に基づく十分な調査や住民への告知をしなかった。
 検出した有機ヒ素は旧日本軍が毒ガス兵器に使ったジフェニルアルシン酸。汚染は、ジフェニルアルシン酸を入手した何者かが九三〜九七年、不法に投棄するため、コンクリートに混入して地中に流し込んだことが直接の原因と認定した。国の責任については第三者による廃棄行為まで管理義務を認めるのは困難と判断した。
 ヒ素との因果関係が認められた住民のうち、十三人はけいれんなどの神経症状や精神遅滞健康被害。発覚時に十二歳以下だった五人の未成年者には一人当たり請求額の満額の三百万円の支払いを県に命じた。このほかは生活権の侵害や農業被害など。母親が井戸水の利用を中止した後に妊娠した子ども二人については、因果関係を認めなかった。
 住民らが公調委に裁定を申請したのは二○○六年七月で、結論は六年越し。申請者側弁護士は「県の責任を認めたことは大きな意味がある」と裁定を評価した。裁定に不服があれば三十日以内に提訴できる。県は同日会見を開き「賠償責任はないという主張が認められず遺憾。提訴するかどうかは協議したい」との意向を表明した。(東京新聞 2012年5月12日)』(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012051202000097.html

 昨日紹介した時事通信の記事(http://d.hatena.ne.jp/NOFNOF/20120512/1336791611)より、事実関係は細かく触れられている。原因が最近投棄されたコンクリート塊であることが述べられているのは良い。
 ん・・・だがこれは何だ???
「検出した有機ヒ素は旧日本軍が毒ガス兵器に使ったジフェニルアルシン酸。」
 検出された物質がジフェニルアルシン酸(DPAA)であることは環境省の調査で明らかにされた(http://www.env.go.jp/chemi/gas_inform/local/kamisu/kamisu_kongo.pdf)。
 しかしDPAAは毒ガスでは無い。だから「DPAA=旧日本軍の毒ガス」であるかのように書く東京新聞の記事は、事実を曲げて伝えている。但し、DPAAには、毒ガスであるジフェニルシアノアルシン酸(DPAAをシアン化したもの)の合成原料として利用された歴史があり、その事は環境省の報告書でも述べられている。
 環境省の調査報告書には、ジフェニルシアノアルシン酸を作るため、DPAAが旧陸軍の委託した民間企業2社により作られ、広島県大久野島にある工場(実戦部隊が原料を調達して一から毒ガスを作る事はあり得ませんので、旧陸軍の毒ガスは全て大久野島で作られていました)で、毒ガスに合成されていた事が記載されている(http://www.env.go.jp/chemi/report/h17-07/02_5.pdf)。けれども、今回の事件の舞台は茨城県神栖市大久野島から随分離れている場所だ。
 大久野島の毒ガスは、記録によれば日本降伏後、進駐してきた英連邦軍により海洋投棄もしくは焼却処分されたという(http://homepage3.nifty.com/dokugasu/qa.html#QA5)。もし原料のDPAAが旧陸軍に納入後、大久野島に保管されていたとしても、毒ガス処分と同時に処理されたと考えるのが妥当であろう(そこから流出したとしたら、それは適切な処分をしなかった英連邦軍の責任ではないか・・・敗戦で混乱した旧日本軍にどれだけ管理責任があるだろう)。
 こうした事情から見て、仮に問題のDPAAが戦時期に作られた物であるとしても、下請け民間企業から旧陸軍に納入されなかったものが、余剰資材として戦後の混乱期に流出したと考える方がケースとしてはあり得るように思うのだが・・・その一方、最近投棄されたという事を考えると、戦後に不法に作られたか、或いは海外から不法に持ちこまれた可能性があることも考慮すべきだろう。環境省の報告書では、由来についての結論は出されていない(http://www.env.go.jp/chemi/report/h17-07/)。
 現在の神栖市鹿嶋市の境には、大東亜戦争末期、桜花特攻で有名な旧海軍、神雷部隊の訓練基地があった。鹿嶋市にある桜花公園には、特攻機桜花が今も飾られているそうだ(http://www.arakawas.sakura.ne.jp/backn012/oukakoue/oukakoue.html)。
 そういう土地柄であるから、神栖市ヒ素事件は、当初、旧海軍が秘匿していた毒ガス弾が原因ではないかと騒がれた背景がある。
 だが、神雷部隊が毒ガス攻撃を準備していた形跡は無く、そもそも環境省の調査で、毒ガス弾は全く発見されなかったのだ。発見されたのは、平成5年以降に投棄された、由来不明のDPAAを含むコンクリート塊である。
 こうした事実にも関わらず、思想的背景からか、無言の英霊達に罪をなすり付けようと執拗に活動する新聞・マスコミ各社の態度は、断じて許しがたい。
 新聞・マスコミ各社の不正確な報道は、この事件の真相を誤認させ、事件被害者をミスリードするばかりか、投棄犯人を追及するという真相解明の点からも、悪影響を及ぼしていると思うのだ。

   


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<神雷部隊始末記>




(リンク)
http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-entry-4646.html
http://ochimusya.at.webry.info/201205/article_7.html
http://kirayamato-sarainiko.at.webry.info/201205/article_6.html